教育関連

レビュー㊾:「教育依存社会アメリカ—学校改革の大義と現実」【書評】

この記事では学校の先生や保護者など、
教育に携わる人には読んでいただきたい1冊を紹介しています。

教育依存社会アメリカはアメリカの教育政策がなぜ失敗するのかについて、幅広い視点から解説しています。

著者はスタンフォード大学教授のデイヴィッド・ラバリーという方で、
ゴリゴリの教育専門家が教育改革が失敗すると述べている点はとてもユニークです!

教育って何のためにあるの?

あなたは学校教育って何のためにあると思いますか?
教育依存社会アメリカでは目的について以下のように考察しています。

①民主的平等
②社会的効率
③社会移動

①の民主的平等と②の社会的効率は、
日本人にも理解しやすい概念であるのではないでしょうか。

国民全員に一定の知識を与える民主的平等と、
社会で求められる能力を国民に手軽に提供できる社会的効率です。

それでは③の社会移動は何でしょう。
あなたは「アメリカンドリーム」という言葉を聞いたことはありますか?

貧富の差がとても大きいアメリカでは、
成り上がりの精神が尊敬の対象になることがあります。
スラム街出身のラッパーやボクサーは貧困層のアイドルになったりもします。

このように、苦しい環境から成功者にのし上がることを「アメリカンドリーム」と表します。

そしてこの目標を達成するために、
公的に教育を授けようとするのが目的③の社会移動です。

教育政治の目的は元来、
上記の3つを実現することでした。

これが少しずつ変化していっていることを、
著者はページ数を割いて考察しています。

「売り手」と「顧客」の関係性

先ほど見てきたように、
教育には社会的に大きな使命がありました。

それが少しずつ、教育を提供する「売り手」教育を受ける「顧客」の関係性に変わってきています。

本書内でも有名な哲学者デューイの言葉を引用して、以下のように表現しています。

「教えることと学ぶことの間には、
売ることと買うことの間にあるのと同様の、
正確な対等性がある。」
つまり、誰か買い手がいなければ優秀な売り手になれないし、
誰かが学習してくれなければよい教師になりえないのだ。

このように教育が商業化していったのには、
社会にあける経済活動の変化も影響しています。

それは簡単に言えば、高学歴=高収入の関係性です。

これはアメリカだけでなく、日本においても同様のデータは存在しています。
高卒よりも大卒の方が収入を得やすく、
選択できる職業も多くなります。

そしてアメリカには、前述の「アメリカンドリーム」の精神が強くあります。

親としては、子どもが裕福になるチャンスを逃したくないのでよりいい教育を与えようとします。
そして、今まで良い教育を受けていた層は、
優位性を保つためにより長く教育を受けようとします。

これが堂々巡りをすることで、
教育は長く、費用は高くなるように変化していっていると著者は考えています。




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学校の目的って何だろう

ここまでは教育の目的という広い範囲で見てきましたが、学校の目的に絞るとどのような特徴があるのでしょうか。

元々教育自体は、
民主的平等・社会的効率・社会移動の目的があったことを説明しました。

そして学校はこの目標達成の実践の場になります。
しかし、そこにいる子どもにとってはそれは全く関係ありません₍笑₎

それは著者も十分に把握していて、
学校での教師と生徒の関係性を次のように考察しています。

教師と生徒は、根本的な欲求の対立を抱えたまま学校で相まみえる。
―中略―
教師は大人集団を代表する存在であり。
それは子どもという集団の自由気ままな生活にとって、永遠に敵なのだ。

このように教師と生徒の間には、永遠と続く緊張関係があります。
それではなぜ教師はそこまで子どもに敵対するのでしょう。

そこには「カリキュラム」が存在しています。
「これをこの学年で教えなさい」というものですが、
これは教育の目標・目的に沿って作られます。

その目標・目的は、
民主的平等・社会的効率・社会移動な訳ですが、
市民の関心はこれではないことも見てきました。

一番の関心ごとは学歴の獲得であって、
市場における優位性の保持にあります。

あくまでも卒業・修了によって得られるものが目標で、
そのプロセスには関心が無いことがほとんどだと指摘されています。

教育者は目的の実現に熱心ですが、
受ける側の「顧客」はその結果に熱心というわけです。

学習するのか「学校する」のか・・・

じゃあ子どもは学校生活に無関心かと言えばそんなことはありません。
友達と遊んだり部活やバイトなど、
様々なことに忙しくしています。

そこで著者は「学校する」という言葉を使っています。

子どもは学ぶ内容よりも、
忙しい中で課題をこなしたり恋愛したりと色々な出来事を調整します。

このような過程で学ぶ「人間力」の方が、
むしろ教育者が熱心な「勉強力」よりも大切では?
と著者は主張している点も興味深いところです。

教育改革は成功しません!

本書の面白いところは、
まさに高度教育の権化ともいえるスタンフォード大学の教授が書いている点です。

著者は教育改革者はいつも間違えていて、
これからも決して大規模な改革は成功しないと考えています。

教育を与える側と受ける側には大きな隔たりがある上に、
社会が求めているものとも大きな違いがあります。

また、高学歴を求める流れによる学校生活の長期化は、
金銭的にも大きな負担であり、
労働力の減少にもつながりかねません。

このように幅広い観点から、
教育を考察している教育依存社会アメリカは、教育に携わる人にはぜひ一読いただきたい1冊です。

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