教育関連

レビュー㊻:「子どもの貧困」【書評】

この記事では「子どもの貧困」という本をご紹介します。
この本は池上彰によって書かれた本で、
日本が直面する貧困問題を扱っています。

貧困問題は日本でも広がりつつあり、
その影響は大きくなっています。

しかも、貧困問題を放置することは、
長い目で見て社会全体の損失に繋がります。

あなたにも無関係な問題ではなく、
全員がもう一度見つめ直すべき問題になっています。

深刻化する子どもの貧困問題

日本にはスラム街のようなところはなく、
社会保障もある程度整備されています。

それゆえに貧困問題をどこか他人事のように考えてしまいがちです。

しかし現在の日本では、
経済的な貧困ゆえに多くの子供が実親の下で成長することができないでいる現実があります。

そのような子供は児童養護施設に入所したり、
里親の下で育てられたりします。

里親が見つかれば環境的には普通の家庭のように過ごすことができますが、児童養護施設はそうではありません。

普通の家庭とは明らかに異なり、
同時に社会に出て自立していくために必要となる武器も少し変わってきます。

児童養護施設の子どもに必要なこと

現在の日本は学歴社会では無くなりつつあると言われています。

これは大卒と高卒の差が無くなったというよりも、
どの大学を卒業しているかの差が小さくなったと言えるのではないでしょうか。

実際に高卒と大卒の平均初任給には4万円程度の差があり、年収にも大きな差があることが分かっています。

現実には学歴はその後の人生に影響を与えることは確かであって、それは児童養護施設の利用者にとってはより大きな問題に直結しています。

最終学歴が高卒の場合、
未成年の状態で就職活動を行うことになります。

未成年の場合はアルバイトをするにしても保護者の承諾が必要になり、履歴書にも保護者のサインが必要です。

児童養護施設や里親で育てられている子の場合、
施設長や里親が保護者代わりです。

この時に保護者の苗字と本人の苗字が異なることで、
事情を聞かれることもあり、
就労に影響が出ることもあるのが現実です。

日本ではまだまだ偏見がはびこっていて、
良い家庭環境で育っていないと人間性に問題があると考えている人もいます。

この問題を解消する手段に、
大学を卒業し、「○○大学卒」という看板を引っ提げる方法があります。

保護された子供の方が、人生において学歴が重要な役目を果たすということが本書で指摘されています。

進学を妨げる課題

大学進学が彼らの人生を好転させる役目を果たしうることに触れました。

一方で児童養護施設の子供にとって大学進学は、単純な学力の問題に留まりません。

児童養護施設で過ごす子供たちに国から支援が出るのは18歳までです。

大学生になったら養護施設を出ていくのが基本です。
しかし、学費を払いながら生活費まで工面するのはあまりに非現実的です。

実際にはスポンサーのような人を探して、
学費や生活費をサポートしてもらうこともあります。

一見するとステキなエピソードのようですが、
それだけ公的な支援ではなく、
私的な支援が無ければ子供を支えきれないという実情を表しています。

児童養護施設からの大学進学の難しさはデータにも表れていて、大学進学率は10%強にとどまっています。

一般的な家庭の進学率は50%を超えていますので、
約5分の1程度の水準です。

人生を好転させるための進学があまりにも狭き門になってしまっています。





スポンサーリンク

子どもの貧困につながる家庭環境

子供の貧困問題と言っても、
子供が稼いでいるわけではありません。

子供が貧困ということは、
その家庭が貧困状態にあることを意味しています。

データ基によって数字は異なりますが、
本書で取り上げているデータの中には、
児童相談所で虐待児として保護した家庭の約50%が経済的困窮状態にあるというデータがあります。

生活保護を受給している家庭も15%前後と、
一般的な家庭の平均を大幅に上回る数字が出ています。

家庭の貧困問題はそのまま、子供の生活環境にも繋がることが示唆されています。

加えてここでも学歴問題があります。
ある児童養護施設に入所している児童の両親の学歴の調査があります。

このデータによると、
母親の最終学歴が中卒の割合が38.5%、高卒が35.9%となっています。

これらの数字も日本全体の数字と比較すると優位に高くなっています。

保護者の環境が表している実態

児童養護施設に入所している子供の保護者が、
比較的低学歴であることは数字から読み取れます。

しかしながら、低学歴な保護者が虐待やネグレクトをするわけではありません。
また、必ずしも経済的に困難を抱えていることにはなりません。

問題になるのが、
教育の機会を十分に与えられなかった保護者が、
同じように自分の子供に対しても十分な教育を行うことができないことがあるということです。

このことは教育に限らず、
子育てで問題に直面した時に、
自分の両親に手助けを求めることのできる環境が無いことも考えられます。

結果としてネグレクトを起こしたり、
子育てをできないほど経済的に困窮したりすることに繋がります。

この連鎖を断ち切らない限りは、
次の代へと負の遺産が受け継がれ、
社会的な偏見へと続いていってしまいます。

子どもの貧困を解消する意義

自分で産んだ子供は自分で育てるという感覚は日本に根強くある意識もしれません。

養育できなくなった子供に対して多くの税金をかけることを良く思わない人もいるでしょう。

それでは税金を投入してまで、
十分な教育を受けられない子供を社会で育てる意義はどこにあるのでしょうか?

それは社会で子供を育てることは、
良い納税者を育てる」ことに繋がることになるという点です。

人口が減少し続けている日本において、
労働人口を確保することは必須の課題です。

もし貧困の子供を放置すれば、
将来的に労働人口が減ることで納税額が減少するだけでなく、
むしろ生活保護などプラスで税金を投入する必要性が出てきます。

つまり、幼少期に公的資金を使わなかったことで、
納税額が減るだけでなく更なる支出を招くことになるのです。

また、幼少期に公的な介入をした方が、
将来の納税を考えると得であるという研究もあります。
幼児期の介入に関しては以下の記事で取り扱っています。
関連記事】>>> レビュー㉙:「幼児教育の経済学」【書評】

結局のところ、
救える子供を救わないことは長い目で見て大きなマイナスとして社会全体に戻ってくることになります。

今一度、十分な教育を受けられない子供に目を向け、
社会全体で支えていく仕組みを作る努力の必要性を考えさせられる一冊でした。

関連記事はこちら

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA