教育関連

書評㉚:「世界はひとつの教室」

「教育は誰でも受けられるべきである」

この考えに反対する人は、
宗教上の理由などを除いたら決して多くはないはずです。

それでも実際には経済的な理由や地理的な理由から、
教育を受けられない人が世界中に存在しています。

生まれ育った場所によって、
学びの機会が奪われることは正しいことでしょうか?

この記事で紹介する本は、
カーン・アカデミー」という学習プラットフォームに関する1冊です。

ハイテク技術の発展を利用して、
いつでも何度でも学習することができる環境を
無料で提供しているサービスです。

新たな学習方法の可能性を示す内容になっているので、
保護者や教職員など教育に携わる方にぜひご覧いただきたく思います。

教育をすべての人に無料で・・・

作者のサルマン・カーンは、
「カーン・アカデミー」の設立者です。

カーン・アカデミーは非営利組織₍NGO₎で、
数学・科学・経済・ファイナンスなど、様々な分野のレッスンビデオを
無料で視聴することができます。

日本語版のサイトも存在していて、
様々な言語で運用されています。

公式サイト:カーン・アカデミー

教育の効率化と意欲の向上

組織の設立までの流れは本書をご覧いただきたいのですが、
このサイトの目的と利点はどこにあるのでしょうか?

一つには、自分のペースで学習が進められる点があります。
現在の教育は定期考査を目標に教科書が進められ、
考査・学期・学年を区切りに学習が遮断されてしまいます。

映像による学習を行うことで、
好きな時に好きな内容を学習できるようになりますし、
教員側もデータを解析することで生徒の学習状況を把握できます。

既に十分理解できている生徒は、
ドンドン先の内容を学習できることも利点として挙げています。

カーン氏は年齢や学年による学習内容の制限は、
子供の学習意欲を削ぐ結果になると考えているんですね。

タブレットによる学習であれば、
一人一人に合った内容に取り組めるので「学習への責任」も身につくと主張しています。

授業内容の関連性の強化

復習を自由に行えることは大きな魅力になります。
学校の授業では、
分からない箇所までさかのぼって理解し直すことを手助けしてくれません。

決められた時期までに、
決められた内容を実施する必要があるからです。

これは学校の授業では、
いったんつまずくと再度追いつくことができないことを表すものでもあります。

加えて、子供自身が自分で苦手を克服することは簡単ではありません。

「どこが分からないか分からない」事態は頻繁に起こるものです。

これを作者の作成するプログラムを使用すれば、
分からない箇所までさかのぼり、理解するまで学習を続けることができるとカーン氏は考えています。

また、教科間を超えて関連性のある事柄について、
包括的に学ぶ機会を提供することもできます。

本書では、関連性のある事柄を学ぶことのメリットを、
以下のように表現しています。

私たちの脳は「関連性」「つながり」の助けを受けてときに、
最も効率的に働くようだということがわかっています。

もっとよくわかるところまで後戻りすればいいのです。

二度目のほうが学びやすという私たちの直感は神経科学でも確かめられていますから、
復習も煩わしくはないはずです。

復習が煩わしくないかはともかくとして、
バラバラに理解するよりも、
関連性をもって学ぶほうが理解しやすいことは、
実生活でも実感できるところだと思います。




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「持つもの」と「持たざるもの」

本書で著者が考えている、
安価で多くの人がいつでも使える教育コンテンツ」は、
非常に重要なものであることは間違いありません。

一方で現実的な問題として、
全体のレベルが上がっても、
その中で順位付けがされることも普遍的な事実です。

もちろん現状のままで良く、
不利な環境の子を不利なままにすることを良しとするわけではありません。

作者は世界的に統一された資格試験を設けることで、
大学名が重視され、何を学んだかが軽視される事態を回避できると考えています。

日本でも十分に考えられる事例が載っていたので、
以下に本文から引用します!

大学というのはチャンスを切り開く場所であるはずなのに、
現実には、フルタイムで働きながら短大で好成績を収めるような子どもは、
ほぼまちがいなく有名大学卒業生よりも冷遇されます。

この事態を避けるのが「カーン・アカデミー」であって、
先ほど挙げた資格試験の統一化になります。

確かに時間と場所に関係なく学ぶことができ、
試験が統一されていれば、
大学名や年齢、出身地や家庭環境は関係ありません。

しかしそれでもやはり差は出ます。
最善を尽くした結果の差は仕方が無いのかもしれませんが、
著者の考えているような、
あたかも「全員が幸せになれる」環境と言えるのでしょうか?

現状批判と改善策

カーン氏の考えている教育方法は、
学年制の廃止やタブレットの配給、大学入試・就職制度の変更など、
現状からの大きな転換を必要としています。

また本書内ではテストの存在への疑問点や教育課程の批判など、
現在行われている教育を概ね全否定しています。

その矛先は教職員というよりは、
そのような環境を続けている官僚などのお役所に向けられているわけですが・・・

このような現行制度の全否定と新たな代替案の提供は、
様々な分野で頻繁に行われています。

ここで一つある本の内容を思い出しました・・・
山口周氏の「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」において、
新たなシステムへの移行について以下のように記しています。

「システムを全否定する」という考え方が、
結局のところ「ダメなシステム=A」を、
他の「ダメなシステム=B」に切り替えようとするだけのものでしかなかったからです。
重要なのは、システムの要求に適合しながら、システムを批判的に見る、ということです。
なぜこれが重要なのかというと、
システムを修正できるのはシステムに適応している人だけだからです。

現在行われていることがすべて正しいわけではありませんが、
それが行われていることには理由があるはずです。

それは歴史を学んだだけでは十分ではなくて、
その世界の中で経験を積まなければ見えないものがあります。

現行の制度の良いところを見つけることは、
批判するよりも難しく、一方で重要なことです。

この視点を踏まえたうえで、
教育がより良い方向に向かってくれれば良いなと改めて感じた1冊でした。

このように、当ブログでは教育問題を中心に、
様々な社会の問題を取り扱っています。

Twitter₍@maroandmeru₎でも、
いろいろな問題をご紹介しているので、
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