この記事で取りあげるのは、
森田直樹氏の「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」です。
不登校は社会問題と化している教育に関する重要な課題です。
進行すると引きこもりにつながることも指摘されているため、
不登校対策は非常に重要視されています。
不登校に対する対策は、
学校単位で様々な取り組みがされています。
場合によっては医師やカウンセラーも加わって、
社会全体で取り組まれることが少なくありません。
それでもなかなか再登校につながらないのが現状で、
解決に向けた具体策が見出しづらいことも事実です。
そんな難しい問題について、
森田氏の不登校は1日3分の働きかけで99%解決するでは、
解決のために必要なことを1つに絞って詳しく解説しています。
不登校を解決に導く「コンプリメント」
本書は不登校改善のポイントとして、
「コンプリメント」を重要視しています。
不登校を「心の水不足」と捉えて、
子どもが自信を取り戻すことが再登校につながると考えています。
コンプリメントは子どもに自信を取りもどさせるための処方箋です。
具体的な方法としては、
1日3つ子どもの良さを見つけて言葉で伝えます。
森田氏は褒める内容として、
「元気な足音が聞こえたら、お母さんとてもうれしくなるよ」などでも良いということです。
子どもに自己有用感を感じさせることが大切だと理解できます。
不登校の子どもを褒めること
子どもを褒めることは一見すると簡単そうですが、
不登校の状態には保護者も焦ってしまいます。
そのような状態で良いところを見つけるというのは、
想像以上に大変なことです。
元気でいたらそれはそれで、
元気なのになぜ学校に行かないのか疑問が浮かんできます。
それでも保護者だからこそ、
子どもの良いところは見つけられます。
そしてそれを根気強く褒め続けることは、
まさしく家族だからこそできる愛情の示し方と言えそうです。
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著者の取組が具体的に書かれていて、焦りを和らげてくれる
著者はカウンセラーのとしての実体験から、
再登校にすぐにつながることを望まないようにアドバイスしています。
それだけ子どもの心には疲労がたまっていて、
簡単には元気になることのできない状態が不登校です。
例え1回再登校しても心の水を使い果たしてしまって、
再び不登校になるということなど現実を見据えて書いているように思います。
再度不登校に陥らないためにもコンプリメントを続けることによって、
不登校になる前の状態まで心の元気と自信を取り戻すことが必要です。
また、不登校児は往々にして「ネット依存を起こす」ことや、「昼夜逆転が起こる」ことなども、明記していることで保護者に対して再登校までの過程の一部として、このような事が起きるのだと理解させることができるように思います。
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保護者に対してのカウンセリング
不登校や非行に関する本の場合、
保護者を全面的に責める、ないしは保護者の責任は皆無かのような論調の本も少なくありません。
しかし、本書内では不登校から子どもが立ち直る過程を、
「再教育」の期間としています。
保護者にコンプリメントを行ってもらうという「保護者の立場での子どもへの取組」とカウンセリングによって、
「カウンセラーから保護者に対してのコンプリメント」という構造を取っています。
保護者の今までの努力を認めつつ、
「1日3分」子どもへの関わり方を今までと変える時間(コンプリメントに費やす)を作るという、
現実的かつ実行可能な方法を推奨しています。
「保護者の捉え方」に関しては異議あり!!
不登校の対策については非常に参考になると思いますし、
再登校につながらなくとも子どもへの関わりは良い方に変化すると思います。
一方で、その他の教育的な考え方については相容れない部分を感じました。
森田氏は本書内で「お母さん」という言葉を多用しています。
自身の体験談の場合、相談相手が母親だったということはあると思います。
しかし、教育に関する考え方、コンプリメントの説明においても「お母さん」です。
子育てを担うのは母親だけではありません。
不登校の家庭に対して森田氏は、家族が仕事を辞め、子どもに付きっきりになることを推奨していませんし、父親であってもコンプリメントをかけることはできるはずです。
この点に関して、母親であることの必要性には全く言及されていません。
子ども大人の夢を実現させるための道具ではない
まず一点、教育は母親ありきという点が現代にそぐわないと感じました。
加えて私が異論を感じたのはコンプリメントの際に、
「なってほしい職業なんかも入れると、将来そちらの方向に進む可能性がでてきます。」という表現がある点です。
現代において、子どもの職業を親が決めることは考えられません。
言葉がけだけで強制されるわけではありませんが、
本来の趣旨と離れていると思います。
まとめ
再登校に向けての方法に関して、有意義であることは間違いないと思います。
一方で、「とにかく褒めちぎる」に近いところはありますから、
再登校以外に得られるものが何かあるのか議論の余地がありそうです。
先述のように「再登校につながる」本だと思いますし、
著者がこのやり方で再登校に導いていると主張する以上、効果はあると思います。
「教育論」に関しては前時代的なものを感じますし、
私の考えとは大きく違います。
しかし、現実には不登校児を抱える保護者は、
「再登校してほしいという強い思い」があるわけです。
その願いを差し置いて、教育論を掲げても仕方がありません。
この本はそんな保護者の願いを実現させるうえで非常に有意義な本と言えます。
教育に携わる人もそうでない人も、
「褒める」力を再認識するうえではぜひ購読していただきたい一冊です!!!