教育関連

書評⑰:「子ども虐待」

昨今、子供への虐待が社会問題化しています。
虐待事件が相次いだことで、法整備を含めて環境の整備が急ピッチで進められているようですね。

子供への虐待というと「殴る・蹴る」のような、
「身体的虐待」に注目が集まりがちです。

実際には身体的虐待以外にも、
様々な虐待の様相が存在しています。

虐待について知ることは、一人の大人として絶対に必要だなと思います。

そこで、虐待について詳しく解説されている本を探していました。
すると!本記事で紹介する西澤哲氏の「子ども虐待」を見つけました。

この本が虐待について丁寧に説明されているんですね。
しかも、虐待する側とされる側の両方の目線で描かれています。

虐待の捉え方も、従来のものとは大きく異なっていて
非常に勉強になったため、ご紹介させていただきます!

虐待を構成する4パターン

虐待には大きく分けて4パターンあります。

身体的虐待
ネグレクト
性的虐待
心理的虐待

からなることが、児童虐待防止法でも示されています。

大切なことですので、1つずつ見ていきましょう!

身体的虐待

身体的虐待とは、冒頭に書いたように
「子どもの身体に外傷を引き起こすような、親の意図的な暴力」
のことを指します。

一般的に、周囲の人が気づきやすい虐待が身体的虐待と言われています。
あざやたんこぶなどが見受けられるため、関わる人が比較的容易に気付けるためです。

著者は身体的虐待について以下のように考察しています。

近年の欧米先進諸国の死亡統計を見ると、乳幼児期の各年齢帯における死亡原因の第一位は、子どもに対する保護者の虐待であることが多い。
日本の「人口動態統計」では、一~四歳の幼児の死亡原因の第一位は、「不慮の事故」となっている。不慮の事故というと、交通事故などによる死亡を思い浮かべるかもしれない。
しかし、たとえば、₍略₎ 事故の主な事故死因を見ると、ゼロ歳児では、「不慮の窒息」、「不慮の溺死及び溺水」が、「交通事故」を上回っている。

このデータって結構怖くないですか?
家庭内で窒息や溺死などが「不慮の事故」として処理されているんです。

0歳児が自分で水場まで行って、溺死になるような行動をすることはありません。
親が一緒についているはずです。
もちろん目を離した隙とかもありますが、
ちょっと勘繰らざるを得ない割合で死亡要因になっている気がします・・・。

ネグレクト

身体的虐待は明確に、直接的に、命にかかわることは想像しやすいと思います。
それではネグレクトはどうでしょうか?

ネグレクトとは、子供の成長・発達にとって必要な身体的・心理的ケアを保護者がしないことを指します。
育児放棄と言えばよりイメージが浮かぶかと思います。

比較的最近になって出てきた概念ですが、今では結構認知されていますよね!

身体的虐待が「子どもに対して有害なことをする」のに対して、
子どもが必要とするものを親が提供しない」ことがネグレクトの特徴になります。

攻撃的でない分見落としがちですが、
ネグレクトは発達過程において、子供に重大な問題を引き起こすことを指摘しています。

不適切な養育が、たとえば「非器質性成長障害」といった医学的な状態につながることも明らかとなってきた。非器質性成長障害とは、不適切な養育による、脳下垂体の活動低下およびその結果としての
成長ホルモンの分泌不全、それにともなう低体重及び低身長状態のことを言う。

つまり、直接危害を加えなくても子供の成長は阻害されていくことになります。

親の愛情不足という問題だけでは片づけられない影響を与えることになってしまいます。

性的虐待

筆者は性的虐待のことを
社会的に否認され続ける虐待」と呼んでいます。
というのも、性的虐待に関する通報件数は、
虐待全体の中の3%に程度にとどまっているからです。

欧米の先進各国の統計に比べると非常に少ないものだと言える。欧米先進国においては、性的虐待が虐待全般に占める割合は一〇~二〇パーセント程度であり、日本とはひと桁違っている。₍略₎
 専門家を含め多くの関係者は、「日本では、欧米に比べ、子どもに対して性的欲求を持つことが少なく、性的虐待は欧米ほど多くない」といった見解でこの違いを説明してきた。しかし、子どもが性的被害を受けるさまざまな事件や子どもポルノの問題が相次いで発覚している状況を考えるなら、このような見解がまったくの見当違いであることは言うまででもない。

この指摘は、いわゆる「ロリコン」という言葉ですべてが片づけられないことを物語っています。
実際に性的虐待を行っている保護者が、
自分の子どもを性的対象として見ているわけではありません

性的虐待を個人的な趣味嗜好と混在することは避ける必要があります。




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心理的虐待

最後に、心理的虐待についてです。
心理的虐待とは
「子どもの心に、トラウマなどといった深刻なダメージを与えるような言動」
による虐待のことを指します。

「お前は欲しくて産んだ子じゃない」「おまえさえいなければ、私はもっと幸せに生きていける」
といったような、子供の存在価値を否定する内容が挙げられます。

心理的虐待は「純粋な虐待」とも言われています。
身体的虐待をしつけだったと言い逃れすることはできますが、
しつけとして子供の存在価値を否定することはできません。

この点は、子供にとっても同様です。
「お母さんは自分のことを思って叩いたんだ」
という幻想への逃避すら許さないからです。

直接的に子供の心を攻撃し、
その後の発達に影響を与えることは間違いありません。

虐待をする保護者の心の問題

虐待にはいくつかパターンがあることを見てきました。

それではそもそもなんで虐待をするのでしょう?
筆者はいくつかのパターンに分けて考察しています。

体罰肯定観

まず初めに、自身が体罰を受けて育った経験によるものです。
体罰を受けて育った場合、体罰は必要であるという考えを持ちやすいことが分かっています。

その理由として筆者は2つの理論に基づいて説明しています。
一つ目が社会学習理論です。

簡単にいうと、「自分がされたようにしか育てられない」ということです。

体罰の存在する家庭で育つと、体罰を用いての教育しか経験できません。
自分が親になっても同じことを繰り返しやすいという考え方です。

もう一つが、自分の人生を肯定したいという感覚です。
体罰を否定してしまうと、自分が育ってきた環境を否定することになります。

「厳しくされてきたから今があるんだ」
と過去を肯定することで、親の愛情を肯定しようとします。

筆者のこれらの考えが正しいと、
体罰は引き継がれやすく、断ち切るのがとても難しいと言えます。

親の心理もかなり詳しく解説

虐待をする親の心理についてすべてはご紹介しませんが、
他にも調査に基づいたいくつかのパターンが紹介されています。

虐待をする者の心理を知ることは、
虐待を受けた子供を救うことと同じくらい大切なことです。

理由がわからなければ対策をすることはできません。
まだまだ虐待をしてしまうときの心的過程は解明されていませんが、
いくつかの傾向を知ることは大切です。

虐待は社会問題

虐待を減らしていくには、社会全体で取り組む必要があります。
虐待が疑われる場合には通報することが求められています。

子供を虐待から救い、保護者を罰することは必要です。
一方で、虐待を社会から無くすためには、保護者の心のケアも欠かせないように思います。

社会の無関心さについて著者は以下のように考えています。

子どもの権利条約は、虐待やネグレクトなどの理由で保護された子どもは、主として里親家庭や養子縁組などの個別の家庭で養育されるべきであると定められている。現に、欧米諸国では、家庭から保護された子どもの八〇~九〇パーセントはそうした個別の家庭で養育を受けている。
しかし日本では、里親家庭で養育される子どもは全体の一〇パーセント程度に過ぎず、九〇パーセント近くの子どもが、児童養護施設などにおいて集団養育を受けているのが現状である。

児童養護施設について、否定しているわけではありません。
里親を担おうとする家庭があまりにも少なく、
選択肢にほとんど含まれていないのが問題です。

集団養育と個別の養育では全く異なってきます。
自分に対してだけ
たくさん愛情を与えてくれる人の存在は心の支えになります。
そのような経験をしないまま大人になることがは、
豊かな心の成長の妨げになることは容易に想像できます。

虐待は子供をもっている親だけでも、教育機関だけの問題でもありません。
社会全体として取り組むべき問題だと言えます。

ぜひ本書を手に取って読んでいただき、
虐待に対して正しい知識をもっていただけたらと思います。

このように、当ブログでは教育問題を中心に、
様々な社会の問題を取り扱っています。

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