グレーゾーン:発達障害者と健常者の境目とは
近年、障害者差別解消法の成立などにより、障害に対する関心・理解が進みつつあります。
勝間和代さんや栗原類さんなど著名人などでも障害を公表するようになりました。
一方で「発達障害は子供の病気である」という誤認もまだまだ存在しています。
発達障害は完治するものではなく、幼少期に発症したら生涯に渡って障害を有した状態が続きます。
このような誤認の原因として、特別支援学校が高等学校までしか無いことが考えられます。
そこから先に進学したければ、健常者たちと同じ大学・専門学校等で学ぶことになります。
また、就職をして社会に出ていくことも少なくありません。
「障害者は施設で暮らす」というのは、はるか昔の話(重度の障害者を除く)になっています。
ここで問題になるのが、障害の傾向がある人(グレーゾーンの人)が困難を抱えながら社会生活を送っているという現状です。
先ほど例に挙げた勝間和代さん。
彼女の舌鋒鋭く問題点を指摘する様からは、世間一般に想像されている障害者像には当てはまらないかもしれません。
しかし!そんな彼女でも医師にかかり、診断受けたから発達障害者として認定されているのです。
彼女も「困り感」を人生の中で感じながら生活しているのでしょう。
更に現在では、診断名はつかないけれど「発達障害の傾向がある」という指摘を医師からされる人もいます。
本記事で紹介する、「発達障害グレーゾーン 」の著者である姫野桂さんも発達障害当事者の一人です。
彼女はグレーゾーンと呼ばれる人たちに取材をし、病名が付かないことで苦しんでいる人たちのことを知ってもらおうと尽力されています。
診断名が付かない苦しさ
グレーゾーンに属する人は、「診断名がつかない苦しさ」を抱えています。
私たち健常者でも、検査をしても原因が分からなければ不安になりますよね?
グレーゾーンの人は、「怠けているのでは?」「甘えでしょ?」と言った負の気持ちを抱いています。
これは、うつ病が現在のように、一般的に認知されるようになる以前の状態と似ています。
誰が見ても重症でないと、相手の苦しみを理解できないのかもしれません。
特に「気分の浮き沈み」や「ケアレスミス」などは、誰にでも当てはまる分だけ「大きな苦痛」として認識しづらいのでしょう。
それが診断名が付かないとなればことはさらに重大です。
「結局病気じゃないんだからサボりでしょ?」「協調性が無い人だ!」といった評価を受けてしまいます。
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障害者の悩みは誰にでも当てはまる!
障害者に対して差別意識をもつことは論外です。
一方で、少しでも力になろうと思うばかりに障害者を「特別視」してしまうことはありませんか?
彼らの悩みに「手を貸してあげる」という上からな目線に立ってしまいがちです。
実際に障害者の悩みを見ていくと、誰にでも当てはまる「困り感」もあります!
例えば、人間関係に対する悩みです。
本書の中で登場する西脇医師は、発達障害者の人間関係の解消法について以下のような方法を提示しています!
「じぶんに期待しない」
「他人に期待しない」
「自分は努力する」
この3点にエネルギーを注ぐべきです。(略)
大抵の人は相手に期待して相手が変わらないと文句を言っていて、そんなのは永遠に続くわけです。
(略)
相手の自己重要感を満たすように心がけること。
この考え方は、障害者にだけ当てはまるわけではありません。
むしろ人間関係に悩む多くの人の解決策にもなり得ます。
障害者特有の悩みもあります。
しかしそれは、専門的な知識をもつ人に委ねるとして・・・
障害があっても無くても、同じように悩み苦しんでいることがあるということを知ることも大切です。
障害者も健常者も共生できる社会を目指して
障害者の中には障害を持っていることを隠して働いている人もいます。
障害を打ち明けることはまだまだ容易ではありません。
障害に対する正しい理解と支援が無ければ、障害の告白はレッテル貼りを加速することにも繋がりかねません。
障害の有無に関わらず、苦手な分野を補填し合いながら社会生活を送ることは全体の幸福度を上げることになります。
そのために、障害について正しい知識をもち、適切な支援を行うことで働きやすい会社・社会の実現を図れたらと思います。