教育関連

書評⑬:「文系と理系はなぜ分かれたのか」

文系・理系の複雑な裏事情とは

進路決定の上で欠かすことのできない要素が「文系・理系」です!
学校では数学・理科が理系、社会・国語が文系という区別が使われます。

簡単な区別のように思いますが・・・
研究対象が複雑になるほど、そんなにシンプルではないようです。

隠岐さや香氏の「文系と理系はなぜ分かれたのか (星海社新書)」では、文系・理系の歴史実際に起こっている問題の2つに分けて詳しく説明してあります。

学問の自由と政治的背景

学問の歴史について読んでいくと、政治的・宗教的思想と関わりが強いことが読み取れました。
先進国において学問の自由は当然の権利とみなされています。

一方で学問は時に、単なる勉強以上に大きな力を持つことがあります。
隠岐氏はこの学問の潮流と歴史的な問題を細かく記しています!

例えば、本書では産業革命と学問について以下のように表しています・・・

一八世紀後半に英国で始まった産業革命は、科学への関心と、発明的な直感や現場感覚を有した技師、職人たちが主導しました。

18世紀のイギリスでは、理系よりも工学系の力が重要視されていたことが分かります!
政治的な施策と学問の隆盛には重要な関連性があるようです。

今の日本でも理系に関する能力が重視される傾向があるように思います。
国立大学における文系学部廃止の動きなど、文系・理系間の優劣も含めて常に論争があります。

企業は高学歴な人を取りたくない?!

学問の世界では、文系・理系のどちらが役に立つのかという論争が常にあります

その一方で、文系にしても理系にしても学問を究めた人をほど就職に不利になることもあります。

文系の大学院卒(修士・博士)は役に立たない」という考え方は「文系不要論」を唱える人の常套句になっています。

それでは理系の大学院卒はどうなのでしょうか?
本書ではこの点について、以下のようにまとめています!

理工系の場合、修士卒が少なくとも損にはなりません。(略)
無期雇用に関する限り、博士卒は学部卒よりも低い就職率を示します。

つまり、理系であっても高学歴が必ずしも優位に作用するわけではないようです。
上記の理由を隠岐氏は「企業とのミスマッチ」によるものと考えています。

修士以上の人材を欲しがる企業は製造業と情報通信業に集中しています。
一方で、科学や医療系は学生数は多いものの就職は多くないのが実情なようです。

ジェンダーと学問の関連

本書の特徴の一つとして挙げられるのが、学問とジェンダーについて考察している点です。
性別と学問と聞くと、「理系には女性が少ない」という要素を挙げる人も多いかと思います!

実際に男女間で理系的能力において学力差はあるのでしょうか?
答えはYesでもありNoでもあります!!

実は調査する国によって、男女の点数に優位な差が見られる国があります
また、学力を何によって判断するかという根本的な問題もあります。

このように、学問に関する向き不向きに関してはまだまだ分からないことが多いのが現状です。

PISAテストにおいて、カタールやヨルダンといった国は女子の上位得点者の方が、男子に比べて高い点数を取っている事実があります。

様々な分野の学問の結集が大きな社会貢献に!

本書では、文系・理系の歴史からジェンダーとの関連まで、幅広く学問について扱っています。
領域間のライバル意識や分化は確かに存在しています。

しかし、現在では複数の学問領域の結集という点に注目が集まっているようです。
このような分野を超えた「学際的」な取り組みが進められています。

学際的な取組について本書では東日本大震災からの復興を例として挙げています!
この例が分かりやすいのでご紹介させていただきます!

復興の過程の中には津波の被害範囲、原発事故の原因究明、経済的影響から復興の地域格差の問題などが含まれます。
これらはそれぞれ、人文社会系・理工医系を超えた知の結集が必要とされています。

更には津波被害にあった古文書の修復作業や災害に関する伝承など、民俗学や日本史の知識も必要です。

現実に起こっている現象に対して、もはや文系・理系という区別のもとでは取り組めません。
それぞれが自分の専門知識を活かし、力を合わせなくてはいけません

何をどこで学ぶかという段階から、学んだものをどう活かすかという時代に変わってきています!

勉強の活かし方を今一度考える機会に最適の一冊だと思いました!

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