教育関連

書評⑩:「いじめを生む教室」

イジメをデータで分析している1冊

いじめは長年にわたり教育業界だけでなく、
社会の大きな問題
として取り上げられています。
近年では、被害を受けた側の感情が重要視されるようになったこと、
些細なものであってもいじめに該当するとして計上するという傾向もあり、
認知件数は大きく増加しています。

いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識 (PHP新書)の著者である萩上チキは、自身も学生時代にいじめの経験をしており、現在はストップいじめ!ナビの代表理事を勤めています。

いじめに関する誤った知識を正してくれる本

本書の副題になっていますが、いじめに関する知識とデータを数多く記載されています。

例えば、文部科学省が調べたデータであり、メディアでも取り上げられやすい資料としていじめ認知件数に関するデータがあります。
少し古いものですが、学校の先生が認知しているいじめの件数では中学1・2年生時にいじめの件数がピークに達するというデータがあります。

一方で、国立教育政策研究所が出している児童・生徒に直接アンケートを取ったデータがあります。こちらでは小学校高学年がピークになり、中学校では少しずつ減少する傾向を示しています。

このように教員が認知しているいじめと、児童生徒が実際に経験しているいじめの実態にはある程度の差があることが考えられます。

こういったデータがこの本には多く存在しています。
メディアは極端な事例をニュースとして取り扱う傾向があります。
一方で、実際に行われているいじめには「無視」「陰口」など、派手に行われるものでないことが多いのが実態です。

報道され目に入るいじめが、全てのいじめだと認識し、いじめが凶悪化しているという誤解を持ったままでは正しい対処法も取れません。
事実を正しく理解することが問題解決には必要だなと再確認させられました。

ネットいじめと、マイノリティいじめ

本書のもう一つの特徴として、
ネットでのいじめやマイノリティに対するいじめに関しても、
データを用いて分析していることが挙げられます。

特にネットいじめに関しては、「近年新しく出現したいじめであり今までのいじめとは違う」という捉え方をしがちです。
しかし、実際は「ネットいじめのみ」を経験している子どもは少なく、学校生活の場でも同じようにいじめの対象になっていることが分かります。

テレビなどのメディアではネット社会の弊害だ!」「ネットの使い方を教えてないからだ!」といった論調が多いように思います。
本書を読むとこういった意見がいかに的外れな意見であるかが分かります。

知識は最新なのに解決策は従来通り?

ここまで見てきたように、いじめに関する正しい知識を提供してくれる本だと思います。
教育に関わる人にはぜひ一読していただきたいと思いました。

本書もいじめに関する本の例に漏れず、改善策を提案しているのですが、この点に関しては少し不満がありました・・・。

基本的には学校現場、行政で改善していこうという考え方を示しています。
学校の先生が良い雰囲気のクラス(本書ではご機嫌なクラス)を作ることができれば、いじめの数は減少する

しかし問題は、「良い雰囲気のクラスを作るためには何が必要なのか」だと思います。
著者は、教員数を増加させることで一人一人の児童生徒に細やかな対応ができるようになると考えています。
また、一人の教員が学級を支配すると暴君的になりやすいとも指摘しています。

ここで残念なのが、改善策を実施するための提案がないということです。
日本の教育への公的資金の活用が少ないことを指摘していますが、これをどこから持ってくるのかが問題なわけです。

教員数の増加は金銭的なリスクを伴います。
また、学生ボランティアのような低賃金・無給の人員を導入することで、起こったトラブルへの責任の取り方はどうするのか、など問題は山積です。

いじめは学校の問題?

そもそも、いじめは学校の取り組みだけで改善させることができるのでしょうか?
教育基本法では、子への教育の一義的責任については保護者が有するとしています。
この点を社会は無視していると思います。

両親を含め保護者は昼間働いていることが多いでしょう。そしてその間子どもは学校へ通います。
学校教育、集団教育の弊害として指導の画一化が挙げられますが、同じように教えているのにいじめをする子と、しない子の違いが出ます。

これに対して、「それは性格の差だ」という意見があります。しかしこの「性格の差」こそが家庭教育の特徴を反映する部分があると思います。
特に子供は接する大人、環境が限られていますその中で、子どもの問題行動に保護者の責任を問わないことは暴論であるとすら思います。

学校・教員に改善する努力を続ける必要性があることはもちろんですが、子の教育への責任は保護者が持たなくてはいけません
「学校にお任せします。」この態度は人の親としてあり得ません。

いじめは、正しい知識をもち、社会で改善!!

「いじめは無くせるのか?」教育的な理想であり、現実的には難しい問題でもあります。
私はいじめの一因は、「社会(大人)」にあると思います。

大人の世界のパワハラやセクハラはいじめと何が違いますか?同じように人の権利を踏みにじる悪質な行為であり幼稚です。
パワハラやセクハラが教育の結果なのか、そのような社会で育てられる子供だからいじめをするのか・・・。
ここは「鶏が先か卵が先か」という問題ではあります。

ただ変えられるとしたら大人の社会が先ではないでしょうか。
大人が自分の力を誇示し、
他者を虐げているようでは健全な社会ではありません。
子供のいじめも自分より強い人に向かうことはほとんどありません

大人が子供のようなことをすることを止めて、
子供たちを正しい方向に導くことのできる社会を作ることが、
根本的ないじめ問題の改善につながると思います。

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